「しなやかな生き方」

最終更新日 

2010-07-12

 「こんにちは。○○です。」
 スーツ姿で挨拶に来た彼は,4年前,自信なげに目をふせながら座ったB君とは考えられないほど,背筋が伸び,顔には自信があふれていました。
 彼は,高校進学後1年で中退。大検で進学するも家庭の事情で卒業できず,飲食関係のアルバイトをしていました。「何とか正社員になってやりたい仕事がある。」と訴えてきたのですが,中卒の学歴が壁になって応募もままならない状況が続いていました。
 話を聞いてみると,真面目で,バイト先の職場では後輩の相談にも乗っている面倒見のよい青年の姿が伝わってきました。
 当時,みやぎジョブカフェでは,「トライアウト」という研修の開始が迫っていました。この「トライアウト」とは,企画力や表現力といった実践的研修により,就職や仕事で役立つ「自己PR力」や「企画提案力」を身につけながら,企業の人事担当者に直接会って,企業から与えられたテーマに対してプレゼンテーションなどを行う,10日間ほどの研修です。トライアウトの説明を受けたB君は,「ぜひやってみたい!」と決断したのです。(この偶然の出会いが,彼の大きな転機のきっかけになっていたとは!)
 B君は,持ち前の真面目さを発揮しながら意欲的に参加し,受講生の仲間達とも積極的にコミュニケーションをとり,仲間から信頼され,チームの一員になっていきました。発表当日には,30社あまりの企業の方の前で発表し,彼には数社から「面接にこないか。」との誘いがありました。その後,新規事業を立ち上げる予定のあったトライアウト参加企業に入社,現場経験後,その新規事業担当に抜擢されたのです。
 偶然の出会いをキャリアチェンジの機会として活かしたB君の姿勢に,好奇心・持続性・柔軟性・楽観性・冒険心を見ることができます。
 相談者の話を聞いていると,本人の思考の面で堂々巡りに入り込んで,塞ぎ込んでしまっていることがあります。一方,相談者自ら,何とかしたいという気持ちを持って来所され,「あっ,そうか!」と自分で気づき,勢いづく事例も多く見ています。
 私は,多くの人が転機に立ったとき,※「山登り型」と「川下り型」のどちらかの対処法を選ぶと考えています。自分は,「川下り型」です。(今は,頂点を目指して登ろうと考えないといった意味です。)川下りしながら、手頃な岸があれば立ち寄り,キャンプして楽しみたいですし,きれいな花があれば摘みたいと考えます。B君が偶然の出会いを活かし,チャレンジする姿勢を私も参考にしたいと思います。
 また,「うまくいっていないな・・・」と感じている人には,今までと違う方法を取り入れることをお勧めしています。先日,広瀬川岸から眺めていたら,カヌーの漕ぎ手の男性が,「川面から岸を眺めると発見がいっぱいある。」と教えてくれました。文字どおり,視点を変えることで,これまで見落としていた「何か」を発見できる可能性があることを教えてくれているのだと思いました。

※「山登り型」:頂(○○で上位△%以内に入る)といった目標を持ち続け活動し,結果を
 重視するタイプ。
 「川下り型」:大海原(地球表面上の約7割を占める)を自身の身の置き場と決め,その
 プロセスを大切にしようとするタイプ。